東日本大震災一周忌法要 天台三山、宗派を超えて鎮魂の祈り

総本山三井寺(天台寺門宗)では、東日本大震災から一年を迎えた三月十一日、宮城県気仙沼市の天台宗・観音寺において総本山延暦寺(天台宗)、総本山西教寺(天台真盛宗)とともに天台三山合同の一周忌慰霊法要を行った。(十四、十五ページに関連記事)


半田孝淳天台座主猊下を大導師に三井寺長吏・福家英明天台寺門宗管長猊下、西村冏紹天台真盛宗管長猊下が副導師を勤められ、天台三山の僧侶約一〇〇名、檀信徒約三〇〇名が参列した。天台寺門宗からは座間光覚・宗務総長、村上法照・宗議会議長、三井寺一山住職をはじめ宮城県を中心に三十七の寺院に被害を被った被災地からも末寺住職ら総勢二十九名が出仕した。

午後一時半から始まった法要では、天台座主猊下が震災犠牲者の冥福を祈るとともに被災者の苦境に思いを致し、復興に向けて手を取り合っていきたいとの表白文を奉読され、犠牲者の霊前には千宗屋・武者小路千家第十五代家元による献茶が供えられた。堂内に読経が響くなか、参列者は犠牲者の霊前に焼香し、静かに手を合わせていた。

天台座主猊下からは、一年を経てなお深刻な状況が続く被災地にあって、多くのかけがえのない肉親や友人を亡くされた参列の人々に「互いに手を取り合い、神仏に手を合わせて祈りを捧げて下さい。きっと心に一筋の灯火を見いだせるでしょう」と励ましのお言葉をかけられた。

福家長吏猊下からも、地震発生直後から托鉢を行い、参詣者や末寺からも義援金の募金を呼びかけるなど、ささやかなりとも復興支援のお手伝いをしてきたが、「今日ここに、わたくしどもの末寺からも被災された方々が参列されており、これからは、いっそう宗派を超えて復興への一助となるよう尽力していきたい」との決意が述べられた。
 そして、震災発生時刻の午後二時四十六分を迎えると、天台座主猊下の発音のもと参列者全員で御十念が唱えられ、犠牲者の冥福を祈る南無阿弥陀仏の声が響き渡った。

当山では、昨年6月に福家長吏猊下を先頭に被災寺院を訪問し、被害状況を踏まえて支援活動に取り組み、8月には福島県相馬市の天王院において仏教青年会による慰霊法要にも参列したところであるが、この度のような天台三山合同による法要は、過去に前例のないもので、天台の各本山が一体となって大震災の犠牲者を追悼し、被災地の早期復興を祈願する歴史的な法要となった。

また、同日には三井寺の西国第十四番札所・観音堂においても慰霊法要を厳修し、地震発生時刻には近江八景「三井の晩鐘」をはじめ全山の鐘をついて犠牲者の冥福を祈った。