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兵庫県の新羅神社(20)

祭祀の事由については「最初墾麿命が、父真鳥を祀って、韓国神社と称したが、後、墾麿の子久々比命が城崎郡司となり、白鳳二年更に祠を建てて、真鳥命、墾麿命を併せ祀り、物部神社と称した延喜式神名帳には物部神社と記されている」(港町誌)更に祭神の系図も記載している。即ち、天火明神と御炊屋姫との夫婦神から宇痲志麻遅命―味饒田命―‥伊香色男命―‥物部真鳥命(韓国連)―…物部久々比命。
 なお当社は明治四十二年十一月部落の火災で類焼し、大正元年十一月に復旧。しかし、昭和二年の奥丹後地震により、山崩れの為に、倒壊し宮地も土で埋まったために三年二月に落ケ谷に建築、十一月に完成した。これらの経緯を書いた遷社碑が境内に建っている。境内社が三社ある。三宝荒神などが祀られている。この地と朝鮮半島との関連からすれば、ケゴヤ古墳が注目される。この古墳は円山川左岸に位置し、横穴式石室の内部から金箔が見つかった。石室には二枚の敷石面がみられ、下面は当然最初の埋葬に伴うものと考えられるが、金箔の内の数点が二面の間から採取されていることからこの金箔は相当古く、木棺の漆に付着していたと考えることができる。とすれば、この古墳は古墳時代の渡来人に係る可能性が強い。この真鳥については、紀の武烈天皇の条には、天皇と争い、なおかつ、真鳥の方が天皇としての政治権力を持っていたと描かれている。恐らく紀に記載されている方が真実に近いのであろう。

4 重浪神社

重浪神社韓国神社から更に東に入る。現在は飯谷峠(開通の碑が建っている)を越えていくことが出きる。京都府との県境の村・畑上集落は山の中の谷間であり、気比川の上流である。集落の一番奥の山の麓に社殿がある。式内社であるが、社殿は古く、大木に囲まれていて、薄暗い場所になっている。神社の前には気比川の上流の川が二本あり合流している。湧水が豊富と見えて、神社の入り口の小さな石造りの太鼓橋の近くに大量の湧水が溢れているので、自由に飲める。飲んでみると実に美味しい水であった。石燈籠の奥にある両部鳥居の上部は破風の屋根を持つ明神鳥居である。その奥に覆屋のような八脚門がある。奥に並ぶ狛犬は上を向くものと下を向くものがあった。珍しい。割拝殿とその奥に本殿が置かれている。本殿の左側には大きな苔むした磐座があり、注連縄が巻かれていた。御船岩と云われている。覆屋としての本殿は入母屋造りで中には流造の本殿が納められている。この本殿の建物には上津大明神と金色で書かれた扁額が掲げられている。境内の右手に小さな平入り屋根の建物があり、稲荷社、山神社、祇園社(素戔嗚神―延命健康の守護神とある)、丹生、秋葉、宇賀神社、など八社の境内社が祀られている。こちらも覆い屋の中に小さな流造の本殿をもっている。重浪神社の祭神は上津綿津見命とも楮主命(かみつぬしみのこと)(神津主命)とも言われている。沿革は町誌、但馬故事記などによれば、天武天皇白鳳三年(六七五)に物部韓国連久々比が父の物部韓国連神津主を敷浪の丘に葬り祀ったといわれているが、一説によれば、推古天皇の三五年の冬一二月に物部韓国連榛麿の子神津主が城崎郡司となり、物部韓国連神津主は物部韓国連榛麿を榛谷丘に葬り祀ったが、その後天武天皇の白鳳三年物部韓国連神津主の子久々比命が城崎郡司となり、命は物部韓国連神津主を敷浪丘に葬ったといわれている。この一帯も物部氏の勢力が強かったことが判る。当社の由緒の説明に祭神は専ら海運や漁業を守護し給う神であるという。当地、上古の自然は気比の浜から入江となって渚をなし、朝な夕なに重浪が打ち寄せる地であったと云い伝え、また、社前の御船岩という大磐は祭神が天降りました時に御船を繋ぎ給いし所との伝説が残っている。今もこの辺りの地中からは貝殻を掘り出すことがあることがあるという。遠き昔の重浪が想像される。次に一説に云う楮主命とは、当村が一里ばかり山奥の地にあった頃から楮を作り紙を製していたので、その業を開拓した先覚を神として同業者ばかりでなく全村が崇敬奉祀したのだとの解釈から生まれている。いずれにしても式内社の一つである(港町誌)。


広島県の新羅(しんら)神社

広島県の広島駅をJRで訪れて、いつも感心することがある。新幹線のホームやJR広島駅の構内にある案内表示が、日本語や英語と共に中国語と韓国語で表示されていることである。山陽新幹線の駅でもあまり例がない。おそらく中国や韓国の人々の来訪が多いのであろう。これと同じような例が鳥取県立図書館でみられた。即ち、図書館の案内書がロシア語と韓国語で書かれていたことである。広島の語源は毛利輝元が「広い島」と言ったのが始まりともいわれている。
 広島県では二万年前の集落遺跡が三次(みよし)市や大朝町(おおあさちょう)、東広島市などで確認されており、縄文から弥生・古墳時代と、それぞれの時代の遺跡が確認されている。弥生時代前期の環濠集落(神辺町)、三世紀(弥生時代─古墳時代)の製鉄炉(三原市)など重要な遺跡が多くある。広島県は安芸国と備後国からなる。北部に中国山地を有し、南部は瀬戸内海に面し、芸与(げいよ)諸島などの多くの島を持つと共に、広島湾は大きな入江であり湾内にも多くの島を持つ。北部の中国山地を越えれば島根県である。古来より出雲地方との往来は盛んであった。素盞鳴尊の八俣の大蛇退治で有名な鳥上山(船通(せんつう)山)は砂鉄による「たゝら」製鉄発祥の地といわれているが、この横田の町から三次を経由、広島地方への街道があり、また横田町からそのまま南へ下れば製鉄の町・福山市である(東城(とうじょう)街道)。広島市は太田川によって造られた広島平野と沖積平野であるが、県内の八三%は山地である。現在の広島市の中心部は、太田川が本川を始めとして天満川、元安川、京橋川、猿猴(えんこう)川等、七つの川に分かれて広島湾に注いでいる。市街の中心部は沖積台地上にある。太田川は広島県の北西部、島根県との県境にある冠山(かんむりやま)(標高一、三三九m。中国山地に属する)から流れ出ているが、その流れが広島市の平野地帯に入る辺りで大きく蛇行し、三篠川や根の谷川と合流している。この合流地に可部(かべ)という街がある。古来、石見街道や出雲往来(石見・安芸路)などの街道が合流する宿場町であり、冠山を越えた島根県の石見地方から鉄製品を始めとする種々の金属製品が可部の宿を経由して広島に運ばれている。可部を中心に安佐北区があり、太田川の南西部が安佐南区である。古くは安南、安北郡、佐東郡の辺りである。

広島市と呉市

広島県(安芸・備後国)の中で新羅系氏族及び加耶系の氏族(天之日槍や都怒我阿羅斯等)と係りが深かったと考えられる地域は、安芸郡、沼田郡、備後の品治郡、三次郡などである。私の訪れたのは安芸郡であった。現在の安佐北区、安佐南区及び呉市である。沼田郡には真良(しんら)(新羅)郷があり、大多良神社(大多羅)もある。真良は山陽道の駅の一つである。安佐郡には漢弁(からべ)郷(韓、加羅部)、幡良(はたら)(秦、多羅)郷があり、新羅氏族と関係があったと思われるが、現在は可部町である。

一、広島市の新羅(しんら)神社

新羅神社入り口広島市安佐南区祇園という町がある。JR広島駅から可部線に乗り約二〇分、古市橋駅で降りる。祇園という地名は京都八坂神社の別名、更にはその辺りの地名である。福岡県にもある。祇園の神が祭られていることから来る名称で、祇園の神とは牛頭天皇、即ち素盞鳴尊と八王子宮(アマテラスオオミカミの五男三女)と少将井の宮(クシイナダヒメ)とを併せ祭った神である(山中襄太『地名語辞典』)という。当地では、この地方は往古「伊福郷」と称し、後に安の庄と呼ばれ、次いで上安村、下安村とに分かれ、寛永十五年(一六三八)、下安村が南北の安村に分けられた。『祇園町誌』によれば、この地域は祇園の庄と称えられていたことによるものであるといわれるが、安神社の祭神が祇園の神(素盞男命とくしなだ姫)で、古来この社を祇園社といい、この地方の人々は「お祇園さん」と呼び、祇園社の前の町を祇園町といい、古くからこの地を祇園の町と称したという。この町の栄えた様子は『芸藩通志』に「祇園町一市聚をなせり」とあることからも判明する。安佐郡には既に紀元前後頃(弥生時代の中期)の遺跡が発見されており、銅鐸・銅剣・銅戈が一括して埋納されていた木ノ宗(むね)山遺跡(東区)百軒にも、また大規模集落の毘沙門台遺跡(安佐南区。環濠集落から丘陵地への移行を示す農耕集落跡)、また高地性集落跡の西山遺跡、西願寺(ざいがんじ)遺跡や恵下(えげ)遺跡(安佐北区)などでは、出雲地方の墓の影響が見られる大型古墳が発見されている。新羅神社鳥居と社殿JR古市橋の駅は小さい駅で、駅前に郵便ポストと公衆電話のボックスが二台ある以外は何もなく、駅前は道路である。駅の横にタクシー会社の電話番号が書いてあるので、早速電話をして来てもらった。まず駅の西方、武田山(標高四一〇m)の麓にある新羅(しんら)神社へ向かうことにした。武田山頂には武田氏の銀山城跡があり、麓には銀山城主武田氏の墓と、武田氏の守護神である新羅神社がある。

鎮座地    祇園町字北下安
祭神     新羅三郎義光の霊
祭祀・例祭  十月二十九日
社殿     本殿(流造)弊殿、拝殿
境内地    八〇坪

(東京リース株式会社・顧問)




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