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異時同図

私が大学生の頃です。能登半島へ旅行に行った帰り道、越前海岸のとある漁村の集落を車で通過しようとした時、 おじいさんが道路を隔てて海岸側にいるお孫さんを手招きして呼んでいる光景が進行方向前方に見えました。 私の車の前にはもう一台の車が走っておりました。 前の車のドライバーも子供がどういった行動をとるかは充分予測をしていると思って、 こちらは減速し始めました。 ところが、前を走っている車にまったくスピードを落とす気配がありません。

私はドライバーに差し迫った危険を知らせたい思いでクラクションを鳴らし続けました。 やっと事態に気が付いて急ブレーキをかけたのですが、間に合いませんでした。 次の瞬間、子供は宙を舞って、そして道路に叩きつけられ、おじいさんは茫然とその場に立ち尽くしておりました。 私はたった今、目の前で起った事故の一部始終を目撃しました。 時間にすればまばたきをするような一瞬の出来事でした。

今でも、私の脳裏にはあの時の一連の情景が、一枚の写真の中に焼き付けられた状態で記憶として残っております。

さて、お釈迦様が前世において永い永い間、菩薩であった時の善行を

集大成したものを「ジャータカ」と申します。本生譚(ほんじょうたん)ともいわれ、 大変親しまれている物語です。今回はその内でも最もよく知られた物語をご紹介しましょう。

「捨身飼虎」、「施身聞偈」の物語は法隆寺に伝来する国宝・玉虫厨子須弥座両側面に描かれています。 前者は『金光明最勝王経』捨身品、後者は『大般涅槃経(だいはつねはんぎょう)』聖行品により菩薩(釈尊の前世)の善行として 描かれていることで有名です。

捨身飼虎図は極度の空腹に耐えかねた母虎が、 今にも自分の子供を食べようとしているのを菩薩が見、自らは衣を脱ぎ、身を高所から投じて 母虎に与えるといった時間的な流れのある事象を、同一画面上に表わすという手法をとっています。 こういった描写方法を異時同図法といいます。 また、施身聞偈図は雪山童子(菩薩)が羅刹(らせつ:人食い鬼)の口ずさむ 「諸行無常是生滅法」の偈文を聞いて、 これに続く偈文を自分の身を羅刹に施すことを条件に教わり、岩に「生滅滅已寂滅為楽」を書き留めて、 同じく高所より身を投じる場面が、やはり異時同図法で描かれています。

ここまで読んでいただいた読者には、少々長い体験談をお話したことの意図もお分かりいただけたかと思 います。




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